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繁盛奉行のお店訪問診断

Vol.1 入りやすいお店を作るには
Vol.2 新しいお客様を獲得するには
Vol.3 売上を確保するためには
Vol.4 店内ディスプレー・店舗の外観を整える
Vol.5 新規のお客様を取り込むために、何を扱うお店なのか明確にする
Vol.6 近隣の大型店舗との差別化を図るには
経営コンサルタント 橋本泉
中小企業診断士・1級販売士
大学卒業後、株式会社和光の紳士婦人用品売り場に勤務。平成9年にコンサルタントとして独立。小売店へのアドバイス、サービス業のマニュアル作りや研修など「勝ち残る企業」づくりの支援に従事。

Vol.6 近隣の大型店舗との差別化を図るには

今回は、埼玉県三郷市の総合衣料アウトレットショップ「良品創庫TRY」(社名:株式会社ビート)さんにお伺いしました。最近開通した「つくばエキスプレス」の新駅である八潮駅の近くにお店はあります。営業時間は10時〜20時まで、年中無休です。80坪程の店内には、50円の靴下から10万円ブランドスーツまで、多様な商品が並んでいます。中心価格帯は、トップス1000〜3000円、重衣料5000〜10000円 です。「良品創庫TRY」は、今年創業6年目です。あえてユニクロの真向かいに店を構えました。1kmほど先には「ファッションセンターしまむら」もあります。開店当時は、フリースブームの只中、近辺では唯一のユニクロだったため、その集客力の恩恵にあずかることができたとのこと。「今やどこに出店したとしても、ユニクロやしまむらとの競争は避けられない。逆にこの立地で、自分が商売できれば、日本中どこに行ってもできる」というチャレンジ精神を発揮しながら、多様なジャンルの衣料品を展開しています。

具体的な現在のお悩み・チェックポイント
1)近隣の大型店舗に対抗していくためにどんな商品を選択すれば良いか
2)集客方法はどこに力を入れていくべきか


Detail Check

店舗の外観です。お伺いした日は、店頭にパラソルやテントを出して売り出しをしていました。夏の日差しに映えるグリーンのパラソルのもとでは、買ってすぐに着られるオンシーズンのカジュアル衣料や小物が買いやすい値段で売られています。店頭が広場のようになっているので、通りがかりのお客様が気軽に立ち寄ることができる雰囲気です。しかし、パラソルやテントによって、お店本体の存在がわかりづらくなっています。横に看板はあるのですが、建物本体にも、業態や店名がすぐに伝わるように看板をつけるとよいでしょう。高い位置に大きな看板をつければ、目立ちますし、それだけ遠くから認識してもらえます。移動速度が速い車での来店客を狙うロードサイド店の看板は、文字が大きく、コントラストの強い色彩を用いて描かれていることを想起してみましょう。 リゾート風のグリーンのパラソルに対して、白いテントはやや殺風景です。お客様の目線に入る「ひさし」の部分に[SALE]の文字が入ったきれいな色の布やフラッグを飾り付けるだけでも華やかさが増します。支柱の部分に造花を飾ったり、カラフルな風船をつけると楽しげな雰囲気になり、お客様が寄りつきやすくなります。
現在、売上高、陳列量ともに大きな割合を占めているカテゴリーは、「ヤングカジュアル系」です。向かいにユニクロ、隣に100円ショップキャンドゥ、近隣にしまむらがある立地です。05年5月には、大型商業施設であるイトーヨーカドーがオープンしました。こうして競争が激しくなる状況で、周辺のお店とバッティングしないカテゴリーを探して行き着いたのが、このヤングカジュアルでした。今や、競合との商品の重複は避けられません。しかし、このように少しでも競合する他店が手薄になっているカテゴリーを見つけ出して、自店の強みに変える工夫は大切です。同じ商品ならば安く売って競争優位を得る方法もありますが、価格だけの勝負になると、結局は自らの利益を減らし、経営を疲弊させることになりますから注意します。生活創庫TRYさんでは、競合と重ならない独自のカテゴリーを見出し、安い仕入れルートを確保しつつ、価格を下げています。
ペアルック さらに、ヤングカジュアルでは、ペアでお揃いになるように、メンズとレディースで、同じブランドを扱っています。ただし、まったくのお揃いではなく、同じブランドの同じモチーフをつかったさりげないペアルックを買いやすい値段で品揃えし、目立つところにディスプレイし、アピールしています。競合との差異化ポイントは、品揃えや価格だけではなく、このように、「どのように売るか」工夫することでも特徴付けられます。
利益率が確保できるカテゴリーが、パーティウエアです。実際には、カラオケ大会の衣装として使われるようです。高い位置にディスプレイしてあるので、遠くからでも目立ちます。着丈が長いドレスは、裾に工夫が施してあることが多いので、(写真の黒のドレス2着)すその汚れを避ける意味でも、服の特徴を出すためにも、高い位置のディスプレイは、効果的です。こうした非日常的な商品は、地味目のものより、華やかなアイキャッチ(お客様の注目を集める)商品を中心にして目立たせます。この写真では、薄紫のドレスがアイキャッチになっています。一段高く飾り付けて工夫していますね。仕入れるときには、このように「見せる」ことを目的とした商品も買い付けましょう。売り場を華やかにしてくれる引き立て役のつもりで買い付けたきれいな色使いの商品や、きらびやかな小物が案外先に売れることもあります。ただし、ドレスのとなりにスポーティーな大リーグのキャップが置かれている点に違和感があります。ドレスの非日常感を演出するためにも、他のコーナーとの差異化を図る意味でも、モールやファーなどで囲みを作ってはどうでしょうか。ハンガーラックの金属部分を隠すように、金銀モールやシフォンやベルベットの布をあしらうだけでもゴージャスな雰囲気になります。
ミセスコーナーは、ラックが二重においてあり、倉庫のような状態です。デパートに並んでいるような一流ブランドの商品が「豊富に」品揃えされています。高級感を演出するのであれば、本来は陳列品数を減らして、1点の価値を高めるように見せるべきカテゴリーです。あるいは類似色同士でまとめる工夫をします。しかし、このお店では高級ブランドさえも大量陳列で買いやすさや親しみやすさを前面に出して訴求しています。これはTRYさんの個性ですね。色や柄が、さまざまな服が大量に並んでいると、その中から、自分に似合う服を「掘り出す」楽しみを味わえるようです。とはいっても、元は高級品ですから、特別感を出す工夫をします。床の色を変えたり、敷物を施したり、ハンガーの材質を変えたりしてはいかがでしょう。現状は、異なるテイストの商品が一面に連続的に陳列されており、そのバリエーションの多さが、商品の陳列の迫力とあいまって、エキサイティングな雰囲気を出しています。しかし、ミセスのコーナーは、他のコーナーを回遊されるお客様との趣が異なりますから、独立性を高めます。ミセスコーナーでは、ディスプレイやマネキンなどの集視ポイントや、鏡に向かったときに、他のコーナーに目が行かないように、配置を工夫します このミセスコーナーには、固定顧客もいらっしゃるとのこと。お名前とお買い上げ品、お好みなどをメモする簡単な顧客カードを作成し、安売り店であっても、きめ細かいアドバイスができれば鬼に金棒です。固定顧客に似合いそうな商品が入荷したら、連絡を差し上げて、商品の開店をよくするように働きかけることも必要です。お電話をかけることに抵抗を感じるお店の方もいらっしゃるようですが、せっかくの商品が売れ残るのはもったいないですし、在庫の負担にもなります。日ごろから店とお客様との信頼関係を作っておけば、迷惑がられることはなく、お買い得商品の案内を喜んでいただけるでしょう。固定客の周囲には、同じ好みやテイストを持ったお客様がいらっしゃることが多いので、ご紹介キャンペーンを行って、お客様を増やす活動も有効です。

フィッティングルームは、お客様が購買を決定する大切な場所です。安売り店といえども、お客様を心地よくお迎えする状態にしておきます。使用していない販促品や什器の置き場が丸見えで、倉庫の一角のようです。商品以外のものは、お客様の目に触れないように、片付けるか、目隠しをします。また、非常口の周囲は片付けて、通路として確保しておくことが望ましいです。フィッティングルーム内部は、お客様が一人になる場所です。ここで商品を検討しながら、無意識のうちに、周囲の状態にも目を走らせます。「買いたい気持ち」に水を指さないように、そしてどこを見られてもよいように、清潔に保つようにします。靴を脱ぐ場所にマットを敷くだけでも、買い物を盛り上げる雰囲気が出せます。

手軽な価格で華やかな洋服が手に入るこのコーナーは人気が高く、接客業などの仕事用に買い求められる方もいらっしゃいます。常連顧客も多いそうです。TRYさんでは、今後このコーナーの拡大を考えていらっしゃるとのことです。華やかな売り場が入り口から店内に広がっていると、入店してすぐの印象もよいですし、わくわくした気持ちになりますね。下着や靴、バックの売り場を囲むようにしてウエアを置けば、関連購買を誘うこともできます。

靴は、他の商品とできるだけコーディネートをして展示し、セット販売による客単価アップを狙います。靴はおしゃれの仕上げ、目立つ部分でもあります。洋服を新調したときに、あわせて靴も買いたい!という願望をTRYさんは、品揃え面でも価格面でもかなえてくれます。これは強みですね。ところで、靴選びの問題点は、サイズです。「サイズお探しいたします。気軽に声をおかけくださいませ」と、承り可能であることを示すPOPをつけましょう。サイズが限定されているのであれば、「シンデレラプライス!23.0の方、大変お得です!」「現品限り」というように明示し、一段高くディスプレイして目立たせます。

1度買い物をすると50円引き買い物券をお渡ししています。何枚かたまらないと使用できない場合もありますが、TRYさんでは、1枚からでも使えます。この気軽さがいいですね。ただし、使用期限が2,3ヶ月先に設定してあります。1ヶ月は短すぎる印象ですし、1年ですと「いつか行こう」と思っているうちにお財布の中で忘れ去られてしまいますので、ちょうどいいタイミングです。服の購買頻度から考えても適切です。さらに、買い物券の裏には、お客様の住所と名前を書いていただく欄があります。これを元に2ヶ月に1回ほどの頻度でDMをだしています。「DMを差し上げますので住所を書いてください」といわれるよりは、「さらにお得な情報をお送りさせていただきますので」と申し上げます。割引券にご住所を書いていただくのであれば、お客様の心理的抵抗も少ないでしょう。引換券の使用期限近くにダイレクトメールが届くようにタイミングを合わせれば、来店比率も高まります。

「TRY」の店名どおり、お客様に喜ばれる品揃えと価格を追求しているお店であることが随所から伝わります。繁盛奉行がお伺いした日は、「勉強のために」と従業員の皆様が全員出社されていました。この姿勢、すばらしいですね。店長の田中さんご一家を中心に、従業員の皆さんが1つの家族のように仲良く協力しながら、お客様のために、楽しく買いやすいお店を作ろうとがんばっていらっしゃいました。この雰囲気が、大手のカジュアルウエアチェーンとの大きな差異化ポイントだと感じます。つくば新線の開業で、駅前を中心に開発がすすむこの地域、人口もさらに増えていくことでしょう。そこで頼りになるディスカウントウエアのお店として、愛され続けることを願っています。


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