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繁盛奉行のお店訪問診断

Vol.1 入りやすいお店を作るには
Vol.2 新しいお客様を獲得するには
Vol.3 売上を確保するためには
Vol.4 店内ディスプレー・店舗の外観を整える
Vol.5 新規のお客様を取り込むために、何を扱うお店なのか明確にする
Vol.6 近隣の大型店舗との差別化を図るには
経営コンサルタント 橋本泉
中小企業診断士・1級販売士
大学卒業後、株式会社和光の紳士婦人用品売り場に勤務。平成9年にコンサルタントとして独立。小売店へのアドバイス、サービス業のマニュアル作りや研修など「勝ち残る企業」づくりの支援に従事。

Vol.5 新規のお客様を取り込むために 何を扱うお店なのか明確にする。

今月は、東京・武蔵小山駅から徒歩5分ほどのところにある婦人服&雑貨店「Brand Select Gallery あかり」さんを訪ねました。武蔵小山は東急目蒲線の始発駅目黒から2つ目、日本初で、日本一長いアーケード"パルム"で有名な町です。営業時間は11:00〜19:00、定休日は火曜日。店名の「あかり」とは、店のコンセプトである「アート」「カルチャー」「リセット」の頭文字です。婦人服のほか、海外で買い付けしたブランド品、ファッショングッズ、他アート・アンティーク等を扱う生活提案型のセレクトショップです。 ファサードは、紺と白を基調にしたスマートな佇まいです。自己主張し過ぎないクールさゆえに、「何のお店かな?」と思わずかえって興味をそそる効果はあります。しかし、遠くから認識できる看板や目印がないので、すぐ近くまで来ないと、「あかり」さんのお店に気づきにくいことも確かです。 店長の三澤敦子さんは、ファサードを目立たせる対策として、店頭上部からお店のイメージをデザインした旗を下げることを思案されているとのこと。イタリア料理店に下がっている国旗のようなイメージですね。そうすると、遠くからでもお店の存在が明確になり、通行客に「あそこにお店があるな」と興味を持って近づいていただくことが可能になります。また、交差点の赤信号で待機する車の通行客にもアピールができます。仮に、2分とまる車が1時間に30台とすると、1日約600台、1ヶ月で、18000台ほどが注目するわけです。近隣には、スポーツクラブや地域サークルの活動が行われる公共施設、美容院などがあります。こうしてお店の前を通行するお客様は、もっとも有望な新規顧客候補です。まずは、お店の存在をアピールしましょう。

具体的な現在のお悩み・チェックポイント
1)初めて近くに来られた方でもすぐにどんなお店か認識できるか
2)取り扱う商品ジャンルを絞るべきか


Detail Check

店内はロフト風の撮影スタジオのような雰囲気です。店舗面積は8坪ですが、天井が高いために、広く感じられます。商品と天井の間は、通常デッドスペースになってしまったり、古い壁や壁紙が露出してしまったりして、悩みの種です。が、「あかり」さんは、この部分にセンスのいい絵画を飾っています。壁の大部分を飾る数枚の絵は、入店客にみずみずしさと温かみを伝えると同時に、店のアーティスティックな雰囲気を醸し出しています。実は、これ、三澤さんのご子息の作品で、売り物でもあります。
入り口を入ってすぐの正面に位置するアンティーク調の陳列棚です。この中には、スーパーブランド品の革小物類が並んでいます。個人の所蔵物のような貴重品感があり、掘り出し物を探したくなるような雰囲気です。棚の中にさりげなく置かれた色小物が、アイキャッチの効果を発揮しています。 ケースの中の商品が、「売り物」であることを今以上にさりげなくアピールするならば、値札を正面に向けて、価格がすぐに分かるようにするとよいでしょう。価格がすぐにわかれば、一目ぼれした勢いを借りて、お客様の購入意思決定が早くできる効果があります。「これいくらですか?」と値段を聞いたら最後、買わなくてはならないプレッシャーを感じるお客様もいらっしゃいます。値札がついていない場合、あるいはお財布などの内ファスナーに値札が取り付けられていて、表に出しづらい場合は、手書きのカードに値段を書いて添えてもいいでしょう。そのときに、「日本未発売」「本国での生産終了」などの特徴があれば、それも書いておきます。
陳列棚の前に置かれたミュールが素敵だな・・・と思って見ると、棚の下に置かれている箱やパンフレット類も見えてしまいました。展示したミュールを入れる箱を近くに置いておきたい気持ちはよく分かりますが、商品以外のものはできるだけ売場に置かないようにしましょう。靴の箱にベロアなど存在感のある布をかけて「陳列台」にしてしまい、その上に靴を飾って見せる方法もあります。
入り口付近には、素敵にコーディネートされたトルソーが並んでいます。店長の三澤さんは、スタイリスト出身。お客様の個性に合ったコーディネートを提案するため、小物等にも力をいれ、ご自身でセレクトしていらっしゃいます。これは「あかり」さんの大きな強みですね。強みは大いに発揮して、お客様にもアピールします。コーディネートしたトルソーを増やしたり、コーディネートした写真を撮っておき、アルバムに収めてお客様にご覧に入れる方法でもよいでしょう。その際、海外で買い付けをされている三澤さんの姿も写真に収めておくと、本当に足を使って探し回った商品であることが伝わります。良質でセンスのある商品でありながら、お店のスペースに並べきれないものも多数あるあるそうです。
店内の一角では、骨董品も扱っています。こちらも三澤さんの目利き力が発揮されていて、引き込まれるコーナーです。これらの骨董品は、毎月1回、出店している東京国際フォーラムの広場で行われる大江戸骨董市に出店しています。骨董品があることで、店格が上がる効果はあるのですが、主力商品である洋服と服飾雑貨の展示スペースを狭める結果となっています。現状では2面使われている陳列棚を1面に集中させ、空いたスペースには、展示しきれない服や雑貨を並べます。そして、骨董品は大江戸骨董市やインターネットショップを主な販路として、販売を継続します。
フィッティングルームは、三澤さんが早急に改善したいとお考えの箇所です。階段の上は倉庫です。階段には、つい荷物を置きたくなりますが、美観上、作業効率上、安全確保上、置かないように注意をします。バックヤードに続く部分は、お店の舞台裏、生活観が見え隠れしやすいものです。あかりさんの場合、階段はよく片付けられていて好印象です。時計はデザイン重視のものが見つかりましたら、架け替えるといいですね。フィッティングコーナーは、撮影スタジオの一角でモデルが着替えをするような雰囲気はあります。しかし、カーテンではなく布を外から渡して止める構造であるために、使い勝手がよくないようです。フィッティングコーナーの入り口は、お客様が自分のタイミングで出入りができるようにカーテンやドアが理想ですね。上部を覆う構造であれば、安心して着替えができます。このお店はフィッティングルームの上部に階段がありますので、特に配慮が必要です。さらに、中に荷物や服を仮置きできるような台かかごのようなものがあると便利です。

もともと倉庫であった場所をお店にしているため、店頭入り口がサッシの引き戸、「出入口」表示もそのままです。正面道路に対して、横長の敷地で、間口が広く、なおかつガラス戸が多くて店内が見えることは、お店としては有利な構造です。しかし、その分、サッシ戸も6面見えてしまい、おしゃれな店の顔としては、やや不利な印象になっています。サッシ戸をオープンカフェの折りたたみ戸に替えることができればよいのですが、コストがかかります。サッシの「さん」部分をブルーか白に塗ってしまう方法もあります。あるいは、お店らしくみせるには、店頭上部にオーニング(店舗用のひさし)をつけます。

外に向けてコーディネートされた服が吊り下げられています。洋服の後ろ側には、レジ台があり、三澤さんがいらっしゃることが多いため、外からの目隠しのために服を下げています。その工夫はすばらしいのですが、せっかくの服がレジ台に圧迫されて高級感が損なわれています。ここには、丈の短いものを飾るか、陳列ボックスを外に向けて並べるようにします。薄い陳列棚を置いてもいいですし、現在レジ前で使われているアクリルキューブを窓際に外に向けて並べ、ミニショーウインドにしてもよいでしょう。せっかくセンスのよい小物がたくさんあるのですから、道行くお客様にご覧頂く機会を作りましょう。まめに展示替えをして、多くの商品を見せることで徐々に注意や興味を引きます。何をいくらぐらいで売っている店かが分かれば、立ち寄ったことがない店に入店するときの不安が払拭され、新規のお客様を増やすきっかけを作ることができます。

お店の前を通行するお客様へのメッセージです。肉筆の温かみが三澤さんのお人柄を伝えています。アーティスティックな雰囲気をアピールするように、外に小型の黒板を立てて、チョークでお店からのメッセージを伝えましょう。「珍しいオールドノリタケもございます」「英国伝統のテーブルセット、単品でもお求めいただけます」「お手持ちのお洋服とのコーディネート相談もお気軽にどうぞ」といったメッセージを日々発信します。小型の看板はイーゼルで支えてもいいでしょう。「使っていないイーゼルがあるわ。でも絵の具がついてしまっているのよ」とおっしゃる三澤さん、絵の具がついているままの方が、アーティスティックなお店の雰囲気にぴったり合うと繁盛奉行は思います。

お買い得商品をお店の外に置き、敷居を低くする工夫をなさっています。三澤さんは、下町風の土地柄に合わせて買いやすい安いものに品揃えを変えるべきか、信念を持ってインポートを貫くか行ったり来たりで悩んでいらっしゃるとのこと。お店を訪問し、三澤さんご本人とお話した繁盛奉行は、お客様に「迎合」することはないと思いました。目利きを活用した品揃えは見ていて本当にわくわくしますし、三澤さんのコーディネートセンスは抜群で、他のお店では絶対まねができない品揃えを可能にしています。これは強みとして維持して欲しいです。 ただし、店舗を移転することは考えず、この土地でお店を続けられるとのことなので、将来にわたって地元のお客様とも信頼関係を築くことを考える必要があります。店頭のお買い得コーナーは、お店との最初の接点づくりのきっかけになります。が、ここでもこだわりは伝えます。POPには値段だけではなく、「一度着てみたいと思っていた色にトライするチャンスです」「1枚プラスするだけで、コーディネートの幅が広がります」といったように、買いやすい値段とともにおしゃれ好奇心にも訴えかけるようなメッセージを添えます。 また、テイストが合う媒体を選んで、広告やパブリシティを出すことも考えます。ファッション雑誌で商品やお店そのものが取り上げられれば、同じテイストを持つ多くのお客様に店の存在を知らせることができます。あるいは、タウン誌、鉄道会社が発行する情報誌の沿線紹介記事といった地域密着型の媒体でもよいでしょう。

ファッションの業界全体を見渡しても、1つにはスーパーブランド、もう一方では低価格カジュアルといった二極分化の傾向が見られます。あかりさんのような付加価値型のセレクトショップは、この2つの大きな流れの狭間で、確かに苦戦している店が多いようです。しかし、女性のおしゃれ心はいつの時代でも、いくつになっても持っているものではないでしょうか。手持ちのカジュアルウエアに素敵なミュールを合わせるだけで、よそ行き風になることに気づいたり、小学校のとき以来、はじめて帽子をかぶって外出し、友人にほめられたり・・・そのような小さな経験をお客様と共有しながら、いつのまにか、服のことはすべて三澤さんに相談してしまう!といった関係になれるお店だと、繁盛奉行は思いました。最初はバーゲン品や小物からのご縁であっても、三澤さんと一言でもお話すれば、その魅力が伝わります。「いつも通りかかるあかりさんのウインドーにあるアクセサリー、友人にプレゼントしたらよろこんでくれるかな」「今度ボーナスをもらったら一着、三澤さんに見立ててもらおうかな」と言う思いを持ってお店の前を歩いてくださるお客様を増やしてほしいです。


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